2003年 1月29日
東京自治労連中央執行委員会
社会福祉法人の変質を助長する「提言」は、福祉とは相容れない。
−福祉サービス提供主体経営改革に関する提言委員会最終報告に対する見解−
1、はじめに
02年7月「中間提言」を出した本提言委員会は、1月22日「最終提言」をまとめました。この「最終提言」は、「中間提言」での「常勤施設職員の給与財源措置の基本的廃止や職員の増配置、利用者サービス経費の固定的補助から実績補助への変更、施設整備費補助の上乗せの見直し」などの内容を前提に、社会福祉法人を「経営体」化し、企業やNPOと対等に競争させるかを具体的に示したもので、社会福祉法人が戦後50年以上にわたって築き上げてきた「実績」を評価するかのような態度を取りながら、企業と同様の「経営」への変質を求めています。すでに、中間提言でも指摘したように、これは、国のすすめる構造改革にそったもので、効率性を最優先し、本来自治体の公的責任でもある福祉背策の安定性や継続性が保てず、子どもの発達保障や、高齢者・障害者の生活保障責任を放棄するものであり、東京都がすすめる「福祉の市場化」を加速させるものです。
2、最終提言が示す「経営」による福祉の市場化
最終提言では、社会福祉法人の現状を、
@ 利用者の声をサービス改善に生かす仕組みやマニュアル化が不十分
A 職員教育が十分でなく、職員の発揮した能力・成果が昇進や昇格、報酬に反映されていない。
B 適正かつ効率的な人員配置やコスト改善への取り組みが不十分
とし、「経営」を持ち込むことで、「限りある人材、資金等をできるだけ有効に活用する」ための「経営改革」をすすめることが可能としています。しかし、付属する「自己改革の実例」などを見ると、経営コンサルタントを入れて、マニュアルの整備・徹底やISO9001の取得やサービス評価の実施と、能力給の導入や非常勤職員の活用など職員人件費の縮減を導き出す事例が多く引用されています。
中間提言での「改革」を前提とし、企業やNPOと同じ市場で、「競い合い」に勝ち抜くための「経営改革」が提言されており、社会福祉法人の変質と「福祉の市場化」をすすめるものです。その一方で、東京都は、その責任をサービスの直接提供責任からサービス全体の調整者へと変質させ、「最終提言」は東京の「福祉」を市場に投げ出す危険なものです。
3、拡大する市場化と福祉の矛盾
「最終提言」では、福祉分野を制約のある「準市場」としています。しかし、住民の生活を守るという制約の趣旨を全く無視しています。
東京自治労連が「中間提言」への批判で展開した福祉の特徴を一定反映した内容となっていますが、その結果、最終提言では、福祉と市場化の矛盾が露呈しています。
例えば、「福祉サービスは対人サービスであり、形に残らないものが多い」「直ちに成果があげられるものではない」としながら、評価の手法として第三者評価や職員への成果主義賃金を導入しようとしています。福祉の特性の中でどのような手法があるかの説明もなく、矛盾する結論を押しつけています。
さらに、「経営改革の必要性」では、これまでの社会福祉法人の優遇措置の存続を前提として、特質を生かすとしていますが、東京都の福祉改革推進プランでは、規制緩和や優遇措置の廃止を策動しています。また、「はじめに」や「供給主体の使命と経営」では、多様な経営主体の「競い合い」のための条件整備を前提とした論述となっていることとも矛盾しています。
このような矛盾や結論の押しつけがあるため、解決策の項では、具体的な解決策を提示できず、経営改革の具体的手法を繰り返しているに過ぎません。新しいあり方を追求した「最終提言」としては不十分なものとなっています。
東京自治労連は、「中間提言」への見解で示した通り、都の福祉水準の向上には、社会福祉法人への公私格差是正措置を中心とする、東京都の補助金制度が必要だと考えています。
福祉の実施責任は、自治体にあります。社会福祉法人はこの間、この自治体の実施責任を補完してきており、今後も福祉施策を安定的・継続的・公平に実施するために、大切な存在です。
もとより、社会福祉法人の日常的な業務の改善は必要です。しかし、同時に自治体の責務として専門的な助言・指導が求められています。社会福祉法人と住民や職員にだけ改善を求めても問題は解決しません。
4、おわりに
今回の「最終提言」では、東京都の補助金の実績補助について「中間提言」以上に踏み込んだものとさせなかったのは、労働組合や福祉関係団体など私たちの運動の成果です。
しかし最終提言では、今後の「福祉改革」を『「中間提言」及び「最終提言」、二つの提言を踏まえ…』としており、中間提言も検討の対象としています。引き続き広範な都民や福祉団体や労働組合との共同行動、「東京の福祉施設を守る連絡会」等に結集した運動をより旺盛に繰り広げることが必要です。
東京自治労連は、『「中間提言」に対する見解と取り組み』で示した取り組みを一層広げ、来たるべき東京都知事選挙では、「福祉を守る」都知事誕生のためにより一層奮闘するものです。 以上